
銚子を旅していて気になった神社。
猿田神社。
名前を見た瞬間から、行ってみたかった。
「猿田」と聞けば思い浮かぶのは、もちろん猿田彦大神。
そして僕の場合、もうひとつ頭に浮かんでしまうものがある。
手塚治虫の『火の鳥』だ。
『火の鳥・黎明編』にも「猿田彦」が登場する。
もちろん、銚子の猿田神社と『火の鳥』に直接の関係があるわけではない。
それでも、深い森に囲まれた境内を歩いていると、日本神話と『火の鳥』の世界が頭の中で重なってくる。
そんなことを考えながら、猿田神社を歩いてみた。

線路の上を超えて、その先に神社があるという不思議な入り口。
猿田神社の拝殿。
森に囲まれた境内には静かな時間が流れている。
銚子の森の中にある猿田神社
猿田神社が鎮座するのは、千葉県銚子市猿田町。
JR総武本線「猿田駅」から歩いて約8分。
銚子というと犬吠埼や海、魚のイメージが強いけれど、少し内陸へ入ると景色が一変する。
緑が濃い。
そして静かだ。
猿田神社の公式サイトでは、八方除けの神社として知られ、境内も豊かな緑に囲まれた場所として紹介されている。
宗教法人猿田神社
境内へ入り社殿の前まで来ると、想像していた以上に立派な拝殿が現れた。

正面から見る猿田神社の拝殿。左右の狛犬まで含めて美しい
この正面からの姿がいい。
左右に狛犬。
中央に注連縄。
そして大きな屋根。
派手な装飾があるわけではないけれど、長い年月をここで過ごしてきた建物ならではの落ち着きがある。
調べてみると、現在の本殿は延宝8年(1680年)に建てられたもので、千葉県有形文化財に指定されている。
拝殿も延享5年(1748年)の建立だという。
宗教法人猿田神社
300年近い。
そう考えてからもう一度建物を見ると、急に見え方が変わってくる。
自分が立っている同じ場所で、何世代もの人たちが手を合わせてきたんだろうな。
御祭神は「道を導く神」猿田彦大神
猿田神社の主祭神は、
猿田彦大神(サルタヒコノオオカミ)
だ。
日本神話では、天照大御神の孫である邇邇芸命が天界から地上へ降りる際、その道を導いた神として知られている。
だから猿田彦大神は、道ひらきの神とも呼ばれる。
猿田神社にはさらに興味深い伝承がある。
猿田彦大神はその後、鹿島神宮の御祭神である武甕槌大神、香取神宮の御祭神である経津主大神が東国を平定する際にも道案内を務め、両神が鹿島と香取に鎮座した後、この地に鎮まったと伝えられている。
宗教法人猿田神社
鹿島神宮。
香取神宮。
そして、
猿田神社。

こういう話を知ってしまうと、地図を開きたくなる。
神社巡りが面白いのはこういうところなんだよなぁ。
ひとつの神社を調べると、次に行ってみたい場所が増えてしまう。
「三日三夜、あやしき光を放った」という伝承
そして猿田神社について調べていて、僕が特に引っかかった話がある。
江戸時代初期の古文書には、「芝台」という場所に突然一人の老翁が現れたという。
そして、その老翁は三日三夜にわたって不思議な光を放った後、姿を消したと伝えられている。
その後、人々が託宣を行うと、猿田彦大神であることを告げ、この地で人々を守るという神託があったという。
現在は境内西端に、その降臨の地を伝える元宮が設けられている。
宗教法人猿田神社
なんだ、この話。
ものすごく好きだ。
突然現れる老翁。
三日三夜。
謎の光(UFO?火の鳥?)。
そして猿田彦大神。
こういう伝承に出会うと、一気に神社が立体的に見えてくる。
単に古い建物を見るだけじゃなく、
「この場所でどんな物語が語り継がれてきたんだろう」と想像してしまう。
拝殿を守る狛犬がたまらない
そして今回、カメラを持って歩いていて特に気になったのが、狛犬。

長い年月を感じさせる猿田神社の狛犬
おぉ。
いい顔している。
石の表面には苔や風化の跡。
白っぽくなった部分。
緑がかった部分。
茶色く変色した部分。
何年ここにいるんだろう。
新品の石像では絶対に出せない色だ。
こういうのを見ると、ついつい寄って撮影したくなってしまう。
そして反対側へ。

反対側の狛犬。左右を見比べてみるのも面白い
こちらもいい。
同じように見えて、表情が全然違う。
正面から社殿を撮っただけなら、おそらく数分で終わってしまう。
でもカメラを持って歩いていると、
狛犬。
注連縄。
屋根。
木。
石。
いろいろなものが気になってくる。
神社とカメラって、ものすごく相性がいいと思う。
猿田彦と聞くと『火の鳥』を思い出す
そして猿田彦という名前を見ると、僕はどうしても手塚治虫先生の『火の鳥』を思い出してしまう。
特に『火の鳥・黎明編』。
手塚治虫公式サイトの作品紹介でも、ヤマタイ国の女王ヒミコの軍を率いる人物として猿田彦が登場する。
猿田彦は主人公の一人であるナギを捕らえ、やがて火の鳥を巡る物語へ深く関わっていく。
手塚治虫 公式サイト
もちろん、これは手塚治虫先生が描いた物語だ。
猿田神社と『火の鳥』に直接の関係があるわけではない。
でも僕の頭の中では、
猿田彦。
古代日本。
深い森。
三日三夜の不思議な光。
そんな言葉が並んでしまうと、どうしても『火の鳥』の世界を思い描いてしまう。
こういう個人的な連想も、旅の楽しさなんだと思う。
神社を訪れる。
神話を知る。
昔読んだ漫画を思い出す。
そして家に帰って、もう一度調べる。
旅からどんどん横道へそれていく。
それが楽しい。
上を見上げると、そこには大きな森がある
社殿や狛犬を撮影したあと、境内を歩いていて見上げた木。

猿田神社の境内を包む森。思わず見上げたくなる木々が残る
でかい。
写真に全部収めるのも大変だ。
でも、これこそ猿田神社の雰囲気を作っているものなのかもしれない。
実は猿田神社の境内林は、その土地本来の植生に近い状態を残す「極相林」として、千葉県の天然記念物、さらに千葉県郷土環境保全地域に指定されている。
宗教法人猿田神社
なるほど。
だから境内に入った瞬間から、森の存在感があったのか。
神社へ行くと、どうしても社殿ばかり見てしまう。
でも猿田神社では、ぜひ一度上を見てほしい。
長い年月を生きてきた木々が、社殿を包むように立っている。
木漏れ日の中を歩いているだけでも気持ちいい。
猿田神社の御祭神は三柱
猿田神社には、猿田彦大神のほかにも二柱の神様が祀られている。
- 猿田彦大神
- 天細女命(アメノウズメノミコト)
- 菊理媛命(ククリヒメノミコト)
天細女命は、天照大御神が天岩戸に隠れた際、その前で舞い、外へ導いた神として知られている。
また猿田神社では、猿田彦大神と天細女命を夫婦神として捉え、それとともに菊理媛命が祀られている。
宗教法人猿田神社
「道を導く」猿田彦大神。
そして人と人、神と神の間をつないでいく神々。
旅の途中に訪れる神社として、なんだかいい。
カメラを持って猿田神社を歩く
今回撮影してみて思ったけれど、猿田神社は写真を撮るのも楽しい。
個人的には、
社殿全景 → 狛犬 → 注連縄や木造部分 → 木々
という順番で見ていくと面白いと思う。
特に狛犬は寄って撮りたい。
石の質感や苔まで写すと、時間の経過が写真に残る。
一方、森は少し広めに。
社殿と森を一緒に撮ると、この神社らしい「深さ」が出てくる。
なお、猿田神社では個人での境内の写真撮影は可能と案内されている。
ただし、拝殿内の撮影は禁止。照明機材などを使った大掛かりな撮影も不可となっているので、参拝時には注意したい。
宗教法人猿田神社
神社は少し知ってから歩くと、もっと面白い
今回、猿田神社を歩いて改めて思った。
何も知らずに参拝するのもいい。
でも、
猿田彦大神とはどんな神なのか。
なぜこの場所に鎮座したのか。
社殿はいつ建てられたのか。
なぜこれほど森が残っているのか。
少しだけ調べてみると、境内で目に入ってくるものが変わる。
僕の場合は、そこからさらに『火の鳥』にまで飛んでいってしまった。
でも、それでいい。
神社を入口にして、神話や歴史、漫画や写真にまで興味が広がっていく。
そんな旅が好きだ。
銚子と聞けば、どうしても海を思い浮かべる。
だけど少し内陸へ入れば、こんな深い森に包まれた古社が残っている。
猿田神社。
またひとつ、銚子で好きな場所が増えた。
猿田神社 基本情報
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 名称 | 猿田神社 |
| 所在地 | 千葉県銚子市猿田町1677 |
| 御祭神 | 猿田彦大神・天細女命・菊理媛命 |
| 最寄駅 | JR総武本線 猿田駅 |
| 徒歩 | 約8分 |
| 駐車場 | 約70台 |
| 撮影 | 境内の個人撮影可・拝殿内撮影不可 |
JR猿田駅から徒歩約8分、駐車場は約70台と公式サイトで案内されている。
公共交通機関は本数が多くないため、電車で訪れる場合は時刻表を確認しておいた方がよさそうだ。
宗教法人猿田神社